不動産投資

カンボジア南部の港湾都市シアヌークビルに異変

シアヌークビルはカンボジア南部に位置する港湾都市で、プノンペンからは車であれば新設された高速道路を使って2時間程、飛行機であれば50分程の場所にあり、カンボジア唯一のビーチリゾート地になります。シアヌークビルは中国の不動産投資に支えられて、カジノやホテル、リゾートマンションなどが次々に着工されて活況を示してきました。また、多くの中国人が労働・移住・観光で訪れ、街中では中国語が飛び交い、ピーク時にはシアヌークビルの人口30万のうち10万人(3人に1人)が中国人になり、「シアヌークビルの中国化」が進みました。しかし今、シアヌークビルの街の雰囲気は変貌しています。

 


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シアヌークビルにおける中国の影響

カンボジア南部の海辺の街シアヌークビルは、中国が巨大経済圏「一帯一路」構想を打ち出した2017年頃から中国資本が洪水のように押し寄せました。数多くの中国企業が進出し、シアヌークビル経済特区はカンボジアの経済特区の中でも最大規模となり、カンボジア・中国両国政府から「一帯一路」構想のモデル事業に認定されています。また、観光開発も盛んに行われ、特に中国資本のカジノやホテルが多数建設されて「第2のマカオ」とも呼ばれています。中国人観光客も急増しており、ビーチリゾートはもちろん、その多くが中国本土では禁じられているギャンブル目当てで訪れるともいわれています。中心部の撮影スポットになっている「黄金のライオン像」は、街の名の由来になった前国王シアヌークの力を「百獣の王」で表したとされています。シアヌークビルに住む外国人の9割は中国人、投資事業の9割が中国からの投資と言われています。地元紙プノンペンポスト紙によると、コロナ過以前(2019年7月時点)のシアヌークビルにある156のホテルのうち150、62のカジノのうち48が中国資本でした。また、カラオケ店やマッサージ店も中国資本が多く、436ある飲食店に至っては95%を中国資本が占めていました。

 

街の雰囲気が一変したシアヌークビル

良い意味で一変したのはインフラ整備が進んだことです。完成が遅れていた首都プノンペンとシアヌークビルを結ぶ高速道路が、2022年10月1日から試験運用が開始されました。また、空港近辺から海岸を通ってビーチに繋がる片側3車線の道路が新設されました。ごちゃごちゃしていた客船ターミナル付近は海岸を埋め立てて、ソッカホテルに至る道路や海岸広場も建設が完了しています。このほか、市内の道路は拡幅整備されており、町の雰囲気は一変しました。

一方、悪い意味で一変したのは開発停滞です。新型コロナウイルスの流行以前は、中国の不動産投資が集中豪雨的に行われていました。それに伴い多くの中国人が労働・移住・観光として訪れ、街中では中国語が飛び交い、看板なども中国語表記が目立ち、まるでチャイナタウンの様相でした。しかし、中国の海外投資規制やカンボジアのオンラインカジノ規制に加えて、新型コロナの影響も大きく、多くの中国人が引き揚げてしまいました。シアヌークビルの住民は、外出すれば必ず中国人がいて騒がしかったのに、今では町がすっかり静まりかえったと語っています。トゥクトゥク(三輪自動車を利用したタクシー)運転手の男性は、中国人がいなくなり収入は5分の1に減って、妻が働く中華料理店も閉店してしまったとの事です。街中では、所々で建設が途中で放棄された現場、もしくは細々と建設中の現場が目立ち、出来上がっていても入居者がいない無人ビルなども多くみられます。中国の大手不動産会社の破たんも中国人の海外不動産投資に影響を与えており、今後は建設工事が止まっている不動産をどうするかも重大な課題となってきます。

チャイナタウン化したシアヌークビルの街中
建設放棄された現場

 

シアヌークビルの今後は

現在、コロナウイルスの感染状況が収束するとともに中国人は少しずつ戻り始めています。中国人旅行者が大量に押し寄せた、かつてのシアヌークビルの姿にはまだ程遠いが、現地では大型の観光開発計画がここにきて相次いで発表されてます。また、完成が遅れていた首都プノンペンとシアヌークビルを結ぶ高速道路(187㎞)が、2022年10月1日から試験運用が開始されました。これによりプノンペン市内からシアヌークビルまで、これまで5~6時間かかっていたところを2時間程度に短縮できます。中国系の不動産開発業者プリンス・リアルエステート・グループは、シアヌークビルの沿岸部で大規模な観光複合施設「リアムシティー」を開発計画中です。「リアムシティー」は、シアヌークビル国際空港から車で約10分の埋立地に、ホテルやリゾート施設、コンドミニアム、一般住宅、商業施設、飲食店などを整備する計画です。いまだ新型コロナの影響が残る中でも、関係者はシアヌークビルの不動産市場の見通しを楽観視しています。その理由について、「シアヌークビルの物件の高い資産売却益、今後見込まれる高度経済成長、不動産投資に関する規制の緩さが」が引き続き中国からの投資を呼び込むと予想しています。シアヌークビルは新しいリゾートホテルとコンドミニアムの開発、そして政府によるインフラの改修により、素晴らしいリゾートシティーへ変貌すると思われます。今年1月にはASEAN観光フォーラムが当地で開催され、今後コロナ禍が終息すれば東南アジアでも有数のビーチリゾート地になるでしょう。

Ream City project in Cambodia

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