カンボジアでは旅行商品の製造(バッグ製造業)への投資が今年の初めに著しく急上昇しています。カンボジア開発評議会は、今年1月から3月まで合計45のプロジェクトに投資承認を与えておりますが、そのうち21のほぼ半分が製袋用(バッグ製造業)となっています。21のプロジェクトの累積投資資本は約1億米ドルになります。
なぜこのように旅行商品の製造への投資規模が膨れ上がったのか、解説していきます。
目次
製造業は中国に拠点を置いている
中国は、1980年ごろから経済開放政策を進めて積極的に外国企業・工場の進出を受け入れることで、資本や新しい技術を取り入れてきました。一方で、外国企業も付加価値産業を営む上でコストはつきものであり、安くて豊富な労働力・広大な用地などを求めて、中国に次々と進出しました。さらに、2001年のWTO加盟に象徴される中国対外開放策は、日本企業をはじめとする外国企業にとって貿易や投資機会を増加させました。その結果、中国は「世界の工場」として注目されるまでに成長しました。
「世界の工場」中国から拠点を撤退する動きが広まる
現在「世界の工場」である中国から生産拠点を撤退する外国企業が増加しています。主な理由が2つ挙げられます。「人件費の高騰」と「関税問題」です。
中国経済の発展による人件費高騰
「世界の工場」として力をつけてきた中国は、経済成長に伴い人件費が高騰しています。またひとりっ子政策から40年以上が経ち、急速な高齢化がスタートした中国では、生産年齢の人口不足といった慢性的な問題が生じるようになったのです。つまり、「世界の工場」としての中国の優勢が危うくなっている原因は、人件費を含めた製造コスト全般が高騰しているからです。2010年頃から毎年16%もの上昇が始まった中国の製造コストは、他のどの国よりも急速に高騰しています。こうした製造コストの高騰が、採算悪化を招き外国企業が生産拠点を中国から撤退させる要因となりました。
米中貿易戦争によって、関税が高くなった
中国に対し巨額の貿易赤字(2017年3752億ドル/約41兆円)を抱える米国が、2018年1月に中国から輸入される太陽光発電パネルや、洗濯機に対して追加関税を課すことを発表しました。これに対して中国も、アメリカから輸入する果物や自動車、ロボットに対して、報復的に関税を引き上げました。このように、アメリカと中国で双方の関税の引き上げ合戦の状態を「米中貿易戦争」といいます。また、アメリカは中国の通貨である「人民元」為替レートを、中国製品の輸出に有利に働くように適正よりも不当に安く操作しているとも主張しています。
巨大消費国アメリカに対しての輸出関税が高くなることは、外国企業が生産拠点を中国から撤退させるもうひとつの要因となりました。特に低付加価値製品の製造業者は、他の国々に工場を移転するのを加速させました。
なぜ、カンボジアが注目されているのか?
なぜ、生産拠点の移転先にカンボジアが注目されているのか?
理由は、豊富な若年労働力と賃金の低さです。カンボジアは、2017年の国別平均年齢が25.6歳で国民の半数が26歳以下であり、賃金水準も他のアジア諸国にくらべて低いのです。低付加価値製品の製造業者は、「若くて安い労働力」を求めてカンボジアに生産拠点を移転しているのです。
さらに、旅行用品(バックパックやハンドバッグなど)に関しては、カンボジアは2016年7月以来、米国市場へ一般特恵関税制度(GSP)を活用して関税ゼロで輸出できるため、外国企業にとってより魅力的になっているのです。一般特恵関税制度(GSP)とは、途上国から輸入する農産品や製品などの関税を低くして(特恵関税)、途上国の経済発展を支援する仕組みです。
2018年のカンボジアの旅行用品輸出額は約5億米ドルで、そのうち3億5000万米ドルが米国市場に輸出されています。外国企業にとってカンボジアは、中国に比べて製造コストが安いうえ、関税面でも中国より好条件なのです。これらの要因が、生産拠点を中国からカンボジアへ移転させたのです。
カンボジア政府は、衣類や履物についても一般特恵関税制度(GSP)の適用拡大を米国に要請しています。さらに、行政手続きの簡素化や最新技術の導入など外国企業が参入しやすい環境整備も進めています。これらが実現すれば、外国企業のカンボジア参入がさらに加速すると思われます。
米中貿易戦争の勃発が、低付加価値製品の製造業者をカンボジアに移転させたのです。
カンボジア経済は益々発展する
カンボジアは、経済発展する条件が揃っています。豊富な若年労働力と賃金の低さはもちろんのこと、外資参入規制の少なさや、ドル化による為替リスクの低さ、ドル化による物価の安定もあり今後も外国からの直接投資がさらに増加していくと思われます。現在のカンボジアは、まさに経済成長の上昇気流に乗っている状態と言えるでしょう。今後の経済成長により、当然物価も上昇し、地価も連れて上昇します。まだ地価が上がり切ってないこのタイミングで、カンボジア不動産投資をしてみる価値は大いにあります。