カンボジアは、2000年代の経済成長率が平均で7%以上の高成長率を維持しておりASEAN(東南アジア諸国連合)において最も注目されている国の一つです。カンボジアでは、2018年通年の国内外企業を合わせた投資認可額が総額65億5,000万米ドル(約7,290億円)となり、前年に比べ15%増加しました。
その内訳は、中国が全体の6割弱を占めている一方、日本(日系企業)も過去最高額を更新しており投資の勢いを加速させています。
目次
ホテル・ニッコーが首都プノンペンへ進出する
株式会社オークラニッコーホテルマネジメントは、2022年にカンボジアの首都プノンペンに日系企業が初めて開発を行う大規模複合施設「Japan Trade Center(仮称)」内において『ホテル・ニッコー・プノンペン』を開業します。ホテル客室は14~22階に配置され、客室標準面積約36m2、総客室数は201室を想定しています。
日本通運がカンボジアの物流を支える
日本通運は、現地法人のカンボジア日本通運がプノンペン経済特区(SEZ)の新倉庫を開設したと発表しました。SEZには日系企業を含め約90社が進出しており、タイとベトナムをつなぐ物流の戦略拠点として、今後も物流需要がさらに高まることが期待されています。
また、ベトナム国境のSEZ集積地でもあるバベット地区にも、新たに物流拠点を開設することから、カンボジア経済の成長スピードは加速するでしょう。
経済特区(SEZ)には、数多くの日系企業が拠点を構える
経済特区(SEZ)とは、経済発展のために法的、行政的に特別な地位を与えられている地域を指します。中国初の経済特区・深センをはじめ、各国の経済特区に指定された都市はその後に目覚しい発展を遂げてきた実績があります。
カンボジアへの投資額1位の中国は6割、同2位の韓国は8割が不動産投資であるのに対し、日本の投資額のほとんどは製造業などへの直接投資になります。特に日系企業は経済特区(SEZ)への進出に力を入れています。
カンボジア日本人商工会の会員企業数をみても、2010年は50社にすぎなかったが、現在は、正会員192社、準会員65社の合計257社と約5倍に増加しています。下記は日本人商工会会員の一部です。
カンボジア最大の経済特区・プノンペン経済特区
プノンペン経済特区には、357ヘクタールの敷地内に、世界15カ国から進出した、90社以上(日系企業45社)の企業が入居しています。カンボジア国内の経済特区の中でも最多の入居企業を抱え、経済特区としては国内最大規模です。また、日本を代表する総合商社の住友商事がプノンペン経済特別区への進出支援サービスを提供しています。
トヨタカンボジアは、プノンペン市内に直営店を設立し、プノンペン経済特区内には5.3ヘクタールの用地に自動車用のストックヤードや部品倉庫、研修センターを設置しています。また、豊田通商株式会社・株式会社デンソー・アイシン精機株式会社の3社合同で、トータルカーサービスを行う直営店「PIT&GO」をプノンペン市内に設置しています。
大手自動車部品メーカーのデンソーは、二輪車用発電機やオイルクーラーを生産する工場を約22億円を投じて、プノンペン経済特区内に敷地面積約10万平方メートルの工場を建設しました。これまでカンボジアでは工場を賃借して二輪車用発電機を生産していたが、経済成長による需要の増加などを見込み自社工場を建設し、生産規模を拡大させました。
味の素は、2009年に進出を決定しプノンペン経済特区内に工場を建設しました。今では、味の素はカンボジアで有名な日本企業の代表である、HONDA、TOYOTA に負けないくらいの知名度になっております。厳密に言うと「味の素」という社名より「調味料 味の素」が有名なようで、カンボジア人の話ではほとんどの家で一家に一袋は置いてあるとのことです。
なぜ、カンボジアへ投資する企業が増えているのか?
労働人口が多いため、働き手がたくさん集められる
カンボジアの大きな魅力は「分厚い若年層」の存在です。2015年のカンボジア人口分布グラフにあるように国民の半数が30歳以下(平均年齢24.0歳)であり、今後50年は労働人口が増え続ける状況です。
ちなみに、隣国タイでは2020年をピークに労働人口が減少すると見られています。
賃金が低いため、固定費を抑えられる
日本企業は、生産拠点を抱えるタイや中国の人件費高騰に悩んでおり、カンボジアの低い賃金は大きな魅力になります。アジア主要都市の労働者月給を見ても、タイ・バンコクの半分程度であり、ベトナムのホーチミンやハノイよりも安い水準です。
人件費が安いというのは、労働集約型製造業にとっては大きな利点になります。特に、付加価値の低い縫製や雑貨などの業種では、中国やタイからカンボジアへ生産拠点を移す企業が増加しています。
中国・タイからカンボジアへ生産拠点が変わる
中国・タイの経済発展の背景には多くの日本企業の進出があることは良く知られています。日本企業は、中国の経済発展に伴う継続的な人件費高騰や対日感情悪化などにより、中国のみではなく第三国にも工場を設置し、リスクを分散して安定的な生産体制を築こうとする「チャイナ・プラスワン」を展開させてきました。
「チャイナ・プラスワン」の行き先として多くの企業が工場進出を果たしたのがタイです。タイには、日本企業の生産拠点が集積しています。しかし、タイでも経済発展による賃金高騰や、2011年に起きた洪水リスクなどもあり、生産工程のなかから労働集約的な部分を、人件費の低いカンボジアやラオス、ミャンマーの経済特区(SEZ)に移転するビジネスモデル「タイプラスワン」が展開されることになりました。
タイに工場がある住友電装や日本電産、矢崎総業、ミネベアなどがカンボジアに工場を設けました。住友電装と矢崎総業は自動車用のワイヤーハーネスを製造しております。日本電産はハードディスク駆動装置(HDD)用モーターの関連製品をミネベアは小型モーターを製造生産しています。また、大手自動車部品メーカーのデンソーも「タイプラスワン」としてカンボジアを選択した。
大手総合商社豊田通商株式会社が100%出資して、工業団地運営会社Techno Park Poi Pet Pvt. Co. Ltd.を設立しました。2016年にバンテアイミエンチェイ州・ポイペトに新しいスタイルの工業団地「テクノパークポイペト」を建設しました。「タイプラスワン」としての労働集約型産業誘致を目的としているので、すでにタイに進出している日本企業の移転先として注目されています。
タイと同じく「チャイナ・プラスワン」の行き先として多くの企業が工場進出を果たしたのがベトナムです。
そのベトナムの経済的中心地として栄えたホーチミンから近い、国境の町カンボジア・バベットでも労働集約型産業誘致を目的とする経済特区(SEZ)が存在しており、多くの日系企業が進出していますいます。
バベット地区には9つの経済特区が集積し、カンボジア国内でもプノンペンに次ぐ数の外国企業が参入しています。
まとめ
カンボジアの豊富な若年層人口と賃金の低さは、「チャイナプラスワン」「タイプラスワン」戦略を考えている日本企業にとっては魅力的です。今後、日系企業を含めた多くの外国企業からの直接投資により、カンボジア経済は益々発展することと思われます。
中国・タイが日本企業の進出により発展して、経済成長、賃金上昇、物価上昇、地価上昇を歩んできたことを参考にしても、現在のカンボジア不動産を投資先として選択するのも面白いと思います。